スキューバーダイビングの魅力とは?「地球」と触れ合い「未知」を冒険するもの

魚













スキューバーダイビングは、スポーツの概念を超えた「冒険」といえる活動です。水中世界という「未知」を旅する冒険です。

美しく透き通る水中には、数多の生命に満ち溢れた世界があります。

地球の大部分は海であり、その面積は地上の比ではありません。海はもうひとつの地球の姿です。地球の体内に入り込みその知られざる生態を五感で体験できるのが、スキューバダイビングです。

私は、年間に600本以上のエアタンクを海中で消費している、プロのスキューバーダイバーです。人々を魅了し、「人生を変える」とまで言わしめるスキューバーダイビングの魅力をご紹介します。

水中世界との出会い

魚

まずは少しだけ、思い出話になります。

10歳の頃、生まれて初めて水族館に行きました。多くの魚が泳いでいる巨大水槽の前で、私は1歩も動けなくなりました。目の前の浩浩たる世界に圧倒されたのです。

豊かな水をたたえた水槽の中を、悠然と泳ぐ魚たちは生命力に満ち溢れています。生命がエネルギッシュに交差しあう光景を目の当たりにした瞬間でした。

「海の中にはこんな世界があったのか…」。いつしか私は、自分が海中に存在しているような錯覚に陥り、暫くその場に佇んでいました。

それからというもの、海のことを知るために図鑑を読みあさり、実際に素潜りで海にも潜って、「海一色」と言える子供時代を過ごしました。

ダイビングと「シフトチェンジ」

マラパスクア島近郊(カランガマン島)

写真:フィリピンセブ:マラパスクア島近郊(カランガマン島)

訪れたダイビングとの出会い

やがて大人と言ってもいい年齢になった私は、都会で日々の生活に追われていました。もう何年も海には入っていません。

とても疲れていたある日、本屋で1冊のダイビング雑誌に出会うこととなります。手に取りひとつページをめくると、そこには宝石のような海中の写真がありました。海の青さ、魚群の美しさに、衝撃が走ります。迷わずその雑誌を購入し、没頭して読み漁りました。

雑誌を読んだことで、抑えられなくなった衝動が私を動かし、1ヶ月後には和歌山県の串本にて「PADI オープンウォーターダイバーコース」という初級資格コースを受講していました。

【PADA オープンウォーターコース・Cカード取得費用(目安)】

  • ・コース料金:40,000円
  • ・2泊3日合宿費:25,000円

合計:65,000円

※Cカード取得費用は団体・ショップにより異なります。

初めての異世界体験

初夏とは言い難い6月上旬。2泊3日で行われた海洋講習は、どちらかといえば楽ではなく、ダイビングのイメージを覆すものでした。10キロ以上ある器材を身につけ過ごす冷たい海は、雑誌の中とは程遠く過酷なものでした。

講習の内容は2日間、ほぼトラブル対処に重点が置かれます。水中でトラブルが起こった場合に、自分自身で問題を解決し自分の命を守ることができなければ、ダイビングを楽しむことはできないからです。完璧に習得できるまで繰り返し練習をし、自分に自信をつけることが講習の最たる意義です。

私は海に慣れている方だったのであまり苦戦はしませんでしたが、一緒に講習を受けている仲間は、時に涙を流しながら、インストラクターに支えられ、何度も繰り返し練習をしていました。

この一連の出来事から、ダイビングはスポーツであると共に、精神を鍛錬する修行でもあると感じました。
ダイビングにて「新しい自分」に出会い、その心には「シフトチェンジ」が起こります。

新世界を手に入れた瞬間

マリンステーション

フィリピンセブ:マクタン島、ポイント名:マリンステーション

無事にオープンウォーターダイバーとなった私たちは、串本沖で初めての本格的なダイビングを経験します。この生涯初のダイビングには、講習の困難を彼方まで追いやる力がありました。

バシャーンと大きなしぶきをあげて身を投じた水中。目前に広がるのは一面の青い空間です。浮遊している自分自身、ぬける様な青さ、差し込む太陽光。現実とは思えない光景に、息を呑みます。

岩陰で生活を営む魚たちの姿や、優しい目をして珊瑚礁に身を預けるウミガメなど、あの日水族館で目にした世界に今実際に存在している。その時の感動は、今でも忘れられません。

ダイビングの醍醐味は出会い

フィリピンセブ:マクタン島(タンブリビーチ)

写真:フィリピンセブ:マクタン島(タンブリビーチ)

海外で初めてダイビングをしたのは、オープンウォーター講習から半年後で、経験本数は14本の時でした。場所はフィリピン・セブ州のマクタン島です。東京・大阪からは直行便があり、約4時間半で到着します。

マクタン島は、水中が保護区となっている海洋保護区を3つ持っている、セブでは言わずと知れたダイビングリゾートの島です。1年を通して気候と海況が安定しているマクタン島には、日本のみならず世界全土からダイバーが集います。

私はセブにある日本人経営のダイビングショップで、初めての海外ダイビングを経験しました。

ボートに乗っているのは、私を含め7人の日本人ダイバーです。すでに1,000本潜っているという年配の女性や、生まれて初めて講習以外で潜るという新人ダイバーの大学生2人、年に2、3度セブを訪れるというベテランダイバーの男性、ダイビングが趣味で出会ったというご夫婦です。

見ず知らずの人々がこうしてひとつのボートに乗り込み、1日一緒にダイビングをする。これがダイビングの醍醐味でもあります。

同じ趣味を持つ者同士は、共通の話題に事欠きません。年齢や職業など社会的な立場は必要なく、垣根をすんなりと飛び越えて交流することができます。海を愛する仲間との出会いは、ダイビングをより一層楽しいものにしてくれます。

壮大な冒険の始まり

アグス

写真:フィリピンセブ:マクタン島、ポイント名:アグス

案内してくれるガイドは、現地フィリピン人のダイバーです。

カタコトながらもわかりやすい日本語で、ダイビングポイントの特徴やダイビングタイム、予定深度などをきちんと説明してくれてとても安心しました。ボート上から水中を見ると、果てしなく透き通っており、水底まで確認することができます。

はやる気持ちを落ち着け、水中で行動を共にするダイビングバディー(ペアとなる人)と最終確認であるサインを出し合い、いざ水中へ。エントリーした瞬間感じたのは、日本との水温の違いでした。

日本の海水温は17~20℃で、海の中はすごく寒いというイメージしか持っていませんでしたが、フィリピンの海水温は30℃です。体感は温水プールのようで温かく、衝撃的でした。

エントリー場所は水深6メートルの浅場でしたが、珊瑚礁が一面に広がっており、その上にはトロピカルフィッシュが群れています。楽園と言わんばかりの光景に、期待が膨らみます。

ディープブルーの世界

海洋保護区オランゴ島の海

写真:フィリピンセブ:海洋保護区オランゴ島、ポイント名:タリマ

皆がエントリーし終えると、ガイドの指示と共に徐々に深度を下げていきます。

浅場の美しい珊瑚礁とトロピカルフィッシュに後ろ髪を引かれながら、切り立った断崖を降りていきます。やがて20メートルを超えようとする頃、周りの景色や水の色が変わり始めます。どこまでも碧い、いわゆるディープブルーの世界です。

生息している生物も様変わりして、全てが初見の珍しい種類ばかりでした。

25メートルを過ぎ、大きな魚礁に到達しました。大きさも色も異なる様々な種類の魚達が入り交じり、悠然と泳いでいます。これまで目にしてきたどの景色よりもその光景は美しく、エネルギーに満ちたものであり心が震えました。

多様性に溢れているけれど平和である、という自然の営みが、ごく当たり前にそこにはあったのです。

地球は、生物がそれぞれに連鎖し合って生きている惑星であることを、改めて実感できた瞬間でした。その場所に滞在したのはわずか5分足らずの時間でしたが、永遠のように感じられ、海の中の圧倒的な光景は、その後いつまでも瞼に焼き付いて離れませんでした。

まとめ

ダイビングは多くの「新しい出会い」をもたらします。新しい地球の姿を知り・新しい友と出会い・新しい自分を見つけることができます。

非日常を望む人、世界感を変えたい人、人生に転機が欲しい人にはおすすめです。ダイビングによって人生が変わった私の今の生活は、最高にエキサイティングです。数々の海と出会い、これからも潜っていけることが楽しみでなりません。

海の中には本来の地球の姿があります。少し独特な例えになるかもしれませんが、ダイビングをするたびに、地球が惑星であるという印象を強く受けます。海と宇宙は似ているのかも知れません。

海は世界中にあり、望めばそのどんな場所ででもダイビングをすることができます。1枚のダイビングライセンスは、未知なる冒険への切符となることでしょう。