オープン・ウォーター・ダイバーのCカードを取得した後、更なるステップアップとして取得することができるアドバンスと呼ばれるCカード取得コースがあります。
多くのオープン・ウォーター・ダイバーの認識としてアドバンスは「深く潜れる」という位のイメージかもしれませんが、それだけではありません。アドバンスのCカード講習を受けることで、ダイビングの技術と知識を大幅にアップできます。
アドバンスの講習内容や金額、アドバンスを持っていたらできること、アドバンスが必要になるのはどんな場面なのか、初心者ダイバーに役立つアドバンスコースの情報をまとめました。
サクッと読むための目次
ダイビングのアドバンスコースとは
正式名称をアドヴァンスド・オープン・ウォーター・ダイバーコース(※以下アドバンス)といい、PADI・オープン・ウォーター・ダイバー以上、またはそれと同等の他団体Cカード取得者が講習可能なコースです。
また、一般的なダイバーからは「アドバンスがあれば深くまで潜れる」という認識のCカードです。
アドバンスコース修了者は、実際にオープン・ウォーター・ダイバーよりも深い深度を取ることができますが、それだけではありません。取得できる技能は多く、合計で24種類あります。アドバンスは、24種類の項目のアドベンチャー・ダイブの中から5種類を修了すると認定が受けられます。
24種類のアドベンチャー・ダイブ
- 水中ナビゲーション
- ディープ
- 水中ナチュラリスト・アルティチュード(高所)
- カーバン
- ピーク・パフォーマンス・ボイヤンシー(中性浮力)
- ボート
- デジタル・アンダーウォーター・イメージング
- レック
- ナイト
- ドライスーツ
- ダイバー・プロフェッショナル・ビークル(水中スクーター)
- サーチ&リカバリー
- 魚の見分け方
- ダイブ・アゲインスト・デブリー(AWARE)
- ディレイド・サーフェス・マーカー・ブイ
- ドリフト
- エンリッチド・エア・ダイブ
- サメの保護(AWARE)
- サイドマウント
- フルフェイス・マスク
- アイス
- リブリーザー
- セルフ・リライアント
以上の項目から5種類を選びますが、そのうち2種類は必須項目を選択します。その他の3種類は自分が好きな項目を選択することができます。以下に詳しく解説します。
人気のあるアドベンチャー・ダイブ
アドバンス講習時に、生徒が選択する率が高い項目は以下です。
- ナイト
- ピーク・パフォーマンス・ボイヤンシー(中性浮力)
- 魚の見分け方
24種類の中の必須アドベンチャー・ダイブ項目2つ
水中ナビゲーション
水中でコンパス・または自然の目標物を使用し、目的地・または元の位置を目指す講習。
ディープダイブ
水深の変化に伴い起こる色彩の変化・気圧の変化を、水深20メートル付近で実際に学びます。
アドバンスで潜れる水深は何メートル?
アドバンスコースの講習を修了すると、水深30メートルまで潜ることができます。
それ以上の深度を取りたい場合は、ディープ・ダイバー・スペシャルティ・コースの受講が必要となります。ディープ・ダイバー・スペシャルティ・コース修了後に潜ることができる水深は、40メートルです。
到達できる水深が深ければ良いとか、絶対に面白いという訳ではありません。ですが、沈船など海の中に沈んだ人工物をレジャーダイビングで観察する時には、おおよそ30メートルくらいまで潜る必要があります。
レジャーダイビングの限界は40メートルです。それ以上の深度でダイビングをする際は、窒素酔い、減圧症のリスクが高まります。
ダイビングは、限度の範囲を超える行動をすると大変危険な状況になります。どんな時も余裕のあるダイビング計画を立てましょう。限度の範囲さえしっかりと守っていれば、ダイビングは安全で楽しいスポーツです。
※レジャーダイビング:一般的なスポーツとして行われるダイビング
※窒素酔い:高分圧の窒素を吸い込むことにより起こる中毒症状。水深40メートル以降、水深が深いほど発症の確率は高まる。
※減圧症:減圧することで体内で窒素が気泡化する症状。
アドバンスが必要になる場面とは?
ケーヴダイビング
ケーヴダイビングと呼ばれる洞窟を探検するダイビングがあります。
洞窟は、海底付近の深い場所に位置していることが多く、水深30メートル位まで潜行する必要があります。アドバンスの資格がなければ、洞窟の入口まで到達できない可能性が出てきます。
透明度が非常に悪い状況
海は突然荒れることがあります。地上で予想外の突風が吹いた時、うねりの影響で海の中がかくはんされます。
ダイビングシチュエーションが砂地・シルト(泥)の場合は、浅場の透明度がほぼゼロになり方向感覚が失われます。コンパスが無ければ、ボートやエントリーした岸に戻ることができません。
実際にアドバンスの必要性を感じた体験
その時の私は、4名のダイバーを連れたレジャーダイビングのガイドという役割でした。突然起こった竜巻のような風で、海の中はぐちゃぐちゃになり、視界は全く無く、伸ばした自分の手さえもはっきりと見えない状況となってしまいました。
うねりで体が揺さぶられ、戻るべきボートの位置も全く把握できません。
しかし私は、アドバンスのライセンス講習必須項目である水中ナビゲーションにて、コンパスの使い方をしっかりと学んでいました。またガイドということもあり、水中にエントリーする前は、帰着位置を正確にコンパスで合わせるという習慣がありました。
視界ゼロの中、他のダイバーを守りながらコンパスの針を頼りに、全員無事にボートにたどり着くことができました。
アドバンスの必須項目である水中ナビゲーションは、危険を回避するために必ず習得しておきたい項目だと感じています。
アドバンスのライセンス費用
PADIアドヴァンスド・オープン・ウォーター・ダイバーコースの基本費用です。
- 教材費:5,814円(税別)
- Cカード申請費用:4,326円(税別)
合計:10,140円(税別)
基本費用以外は、選ぶショップにより様々です。おおよその合計価格は、40,000円~70,000円で、選ぶショップやその特典により大きく開きがあると言えます。
ライセンス費用の内訳は、タンク代金・ボート使用代金・レンタル器材代金・宿泊費・食事代金・その他です。これらはショップが独自に設定してある内容です。
アドバンスコースの講習を申し込む際は、提示されている価格にどんな事柄が含まれているのかを事前によく確かめることをおすすめします。
アドバンスを取ったら揃えるべき器材
アドバンスを取得することで必要となる、または持っているべき器材とはどんなものでしょう。
コンパス
アドバンスコースのアドベンチャー・ダイブ必須項目の水中ナビゲーションでは、コンパスの使い方を習います。アドバンスコース受講を機会に、ぜひ自分のコンパスを持つことをおすすめします。
ダイビングの際、全てをガイド任せにすることは危険です。自分の管理は自分で行うことがダイバーの鉄則です。自身のコンパスがあれば、万が一グループからはぐれてしまった時でも、自分自身で岸にたどり着くことができます。
ダイビングコンピューター
アドバンスを取得することでダイビングで到達できる深度が30メートルとなります。深度が深くなればなる程、減圧不要限界が短くなります。
ダイビングコンピューターは、ダイビング中の減圧不要限界を自動で計算し残り時間を表示してくれます。特に、深場やケーヴダイビングでは、バディやガイドと減圧不要限界を確認し合いながらダイビングをするので、ダイビングコンピューターは必ず身に付けていなければなりません。
また、ダイビングコンピューターは、エギジット時間から必要な水面休息時間を自動で割り出してくれるので、反復ダイビングの際に非常に便利です。
※減圧不要限界:減圧を必要とせず現在の深度に滞在できる最大時間
※水面休息時間:1回目のダイビングを終えて、次のダイビングが始められるまでの時間
※エギジット時間:ダイビングを終了し水面へ出た時間
水中ライト
アドバンスコースのアドベンチャー・ダイブに、ナイトという項目があります。これは、日が沈んでしまった後の海でダイビングをする技術が習得できる項目です。日没後、太陽の光が全く無い状態でのダイビングとなるので、水中ライトは必須アイテムです。
水中ライトは2,000円台から40,000円台のものがありますが、軽量でコンパクトな商品が使いやすいのでおすすめです。
まとめ
アドバンスのCカードを取得することで、海の深い場所まで潜れるという資格を持つだけではなく、世界中のあらゆる海でダイビングをすることができるようになります。今までに見ることができなかった珍しい生物や、壮大な景色にも出会えます。
潜る場所が限定されず、ダイビングに対する安全知識を深めることができるアドバンスコースは、ダイビングを続けていく上で、ぜひ取得しておきたいCカード取得コースです。新たなダイビング技術を獲得することでより一層ダイビングの幅を広げて、まだ見ぬ海へ冒険をしましょう。